
ドナウの絶景と壮麗な修道院の町、オーストリア・メルクを訪ねて
ウィーンから電車でわずか1時間半。ドナウ川沿いの静かな町「メルク」は、世界遺産ヴァッハウ渓谷の玄関口として知られ、特に丘の上にそびえる壮大なメルク修道院で多くの観光客を魅了しています。バロック様式の建築美、ドナウ川の景観、小さな旧市街の趣ある街並み——この町には、日常から切り離されたような穏やかな時間が流れています。
ウィーンから電車で約1時間。日帰りでも快適にアクセス可能
メルクはオーストリアの首都ウィーンから西へ約80km、鉄道で1時間ほどという好立地にあります。最も便利なのが、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)による鉄道アクセス。ウィーン西駅(Wien Westbahnhof)から出発する直行列車は、1時間に1本以上の頻度で運行されており、所要時間は約1時間。ウィーン中央駅(Wien Hauptbahnhof)発着のルートもあり、場合によっては乗り換えが必要ですが、最速で約53分と短時間で到着できます。
列車のチケットはÖBB公式サイトや駅の券売機、旅行予約アプリ(Omioなど)でも購入可能。観光シーズンは混雑することもあるため、事前予約がおすすめです。
メルク駅から修道院までは徒歩圏内
メルク駅に到着したら、そこから修道院までは徒歩約10~15分ほど。町の中心部を抜けて坂道を上がるルートですが、道は整備されており、散策気分でのんびりとアクセスできます。駅周辺にはレンタサイクルショップもあり、天気の良い日は自転車で旧市街や周辺の田園風景をめぐるのも一つの楽しみ方です。
車でのアクセスもスムーズ。ドナウ沿いのドライブ旅にも最適
レンタカーでのアクセスも快適で、ウィーン市内から高速道路A1号線を使えば約1時間で到着します。修道院周辺や旧市街には有料の観光者向け駐車場が複数あり、ピーク時以外であれば比較的スムーズに駐車可能。ヴァッハウ渓谷の風景を楽しみながらのドライブ旅行にもおすすめです。
クルーズやバスとの組み合わせも可能
鉄道でメルクまで行き、そこからドナウ川クルーズでクレムス方面へ移動する「クルーズ×鉄道」プランも人気。ÖBBなどが販売している「ヴァッハウ・コンビチケット(Wachau Kombiticket)」を利用すれば、列車・修道院入場・クルーズがセットになったお得なチケットも利用できます。
また、メルクからヴァッハウ渓谷内の村々へ向かうローカルバス(715番など)もあり、デュルンシュタインやシュピッツなどの町へ気軽に足を延ばすことができます。
圧倒的な存在感を放つメルク修道院

メルクの象徴とも言える「メルク修道院(Stift Melk)」は、ドナウ川を見下ろす丘の上にそびえる壮麗なバロック建築です。もともとは11世紀に創建され、18世紀に現在の華やかな姿へと改築されました。外観だけでなく内部も見応えがあり、金箔がふんだんに使われた聖堂、天井一面に描かれたフレスコ画が印象的な図書館、そして静寂に包まれた中庭など、訪れる者を圧倒する空間が広がっています。
特に図書館には、写本や初版本を含むおよそ10万冊もの蔵書が収められ、学術的にも価値の高い場所として知られています。ベネディクト会修道士たちの知の営みが今なお息づくこの場所は、宗教施設でありながらも、芸術・教育・建築が融合した文化の中心地です。
修道院のテラスからは、ゆったりと流れるドナウ川と緑豊かなヴァッハウ渓谷を一望できます。特に夕暮れどきは、柔らかな光が建物を金色に染め、神秘的な静けさとともにこの地ならではの厳かな美しさを味わうことができます。
こぢんまりとした旧市街に流れる中世の面影
メルク修道院から坂道を下ると、すぐにたどり着くのが小さな旧市街。石畳の道に沿って、パステルカラーのファサードをもつ歴史的な建物が並び、中世から続く町の面影が今も色濃く残っています。細い路地をそぞろ歩けば、旅人を迎えるカフェやベーカリー、ブティックが静かにたたずみ、観光地でありながらも落ち着いた雰囲気を保っています。
旧市街の中心には、町の広場「ラートハウス広場(Rathausplatz)」があり、季節によっては地元のマーケットやイベントが開かれることも。広場を囲む建物の多くは18~19世紀のもので、現在は土産物店やレストランとして利用されています。
散策の合間には、地元カフェで本場のザッハトルテやアプフェルシュトゥルーデルを味わってひと休みするのもおすすめ。
お土産には、修道院で作られたオリジナルの蜂蜜や薬草リキュール、ハンドメイドのキャンドルや石けんなどが人気。量産品ではない、こだわりの逸品に出会えるのも、こぢんまりとした町ならではの魅力です。時間に追われず、ゆったりと流れる空気の中で、メルクの素顔に触れてみてください。
ドナウ川クルーズで体感するヴァッハウ渓谷の美
メルクは、ユネスコ世界遺産に登録されている「ヴァッハウ渓谷」の西端に位置し、このエリアのハイライトとも言えるドナウ川クルーズの起点となります。特に人気なのが、メルクからクレムスまでを結ぶ約36km・所要約1.5~2時間のクルーズコース。ゆったりと流れるドナウ川を船で進みながら、丘の上に佇む古城や教会、ぶどう畑が連なる牧歌的な風景を堪能できます。
船のデッキからは、シェーンビュール城やデュルンシュタイン修道院といった見どころが続き、どの瞬間もまるで一枚の絵画のよう。途中の村々では、途中下船してワインテイスティングや町歩きも楽しめます。
クルーズのベストシーズンは春から秋。春には新緑と花が咲き誇り、夏はぶどう畑の緑が最も濃く、秋には黄葉とともに収穫祭のにぎわいが各地で見られます。ブドウの収穫期には、地元ワインや新酒(シュトゥルム)を味わえるチャンスも。
船会社は「Brandner Schiffahrt GmbH」と「DDSG Blue Danube」が有名で、どちらも事前予約が可能。観光客が多い時期は混み合うこともあるため、早めの予約がおすすめです。メルク修道院とあわせて、ヴァッハウの自然と文化を肌で感じられる贅沢な体験です。
自然と歴史を結ぶサイクリングロードも魅力

アクティブにメルク周辺を楽しみたい方には、ドナウ川沿いの名物サイクリングロード「ドナウラートヴェーク(Donauradweg)」がおすすめです。ヨーロッパ有数のロングトレイルとして知られ、ドイツ・パッサウからウィーン、さらに東欧へと続くこの道は、ヴァッハウ渓谷の美しい自然と歴史的な町並みを間近に感じられる絶好のルート。
メルクを出発して東へ進むと、ワインの名産地ヴァイセンキルヒェンや、リチャード獅子心王の幽閉で知られるデュルンシュタインなど、見どころが次々と現れます。川沿いに整備された舗装路はアップダウンが少なく、初心者でも快適に走れるのが魅力。自転車はメルク駅近くのレンタルショップで借りられ、ヘルメットやチャイルドシート付きのオプションも用意されています。
途中には、ワイン農家が運営する直売所(ホイリゲ)やオープンテラスのカフェが点在し、地元産の白ワイン「グリューナー・ヴェルトリーナー」や、軽食を楽しみながら休憩することも可能。春から秋にかけては、ぶどう畑の景色がとくに美しく、写真好きにもおすすめのエリアです。
1日だけの軽いライドから、複数日かけた本格的な周遊まで、旅のスタイルに合わせて自由にプランニングできるのも、ドナウラートヴェークの大きな魅力です。
メルクは日帰りでも、1泊でも楽しめる
ウィーンから電車で約1時間半とアクセスが良く、日帰り旅行先として人気のメルク。修道院の見学や旧市街の散策、ドナウ川クルーズを半日で効率よく楽しむことができ、気軽な旅先としておすすめです。
とはいえ、時間に余裕があればぜひ1泊して、日中とは異なるメルクの表情に触れてみてください。夕暮れ時、丘の上に建つ修道院が柔らかな光に包まれる景色は格別で、夜にはライトアップされた建物が静かに町を見守ります。観光客が少なくなる夜の旧市街は、しっとりとした雰囲気に包まれ、まるで中世に戻ったかのような感覚に浸れます。
宿泊施設は規模こそ小さいものの、家族経営のあたたかみあるゲストハウスから、川沿いの眺望が楽しめるブティックホテルまで揃っており、落ち着いた滞在が可能です。地元食材を使った朝食や、自家製ワインをふるまう宿もあり、観光の延長としてだけでなく、滞在そのものが旅のハイライトになるでしょう。
短時間で楽しむ日帰り旅も良し、ゆったり過ごす宿泊旅も良し。メルクはどちらの旅スタイルにも応えてくれる、柔軟な魅力をもった町です。